
「フリーアドレス」の効果を知ってますか? 成功事例7選と失敗事例から学ぶ
「従業員のエンゲージメントを高めたい」
「そこでフリーアドレスを検討しているが、効果のほどは?」
「フリーアドレス導入の事例を知りたい」
このようにお考えの経営者・人事の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、フリーアドレスの成功事例・失敗事例をご紹介します。
- フリーアドレスの成功事例がわかる
- フリーアドレスの失敗事例から対策を学べる
- フリーアドレスの成功のポイントがわかる
働き方の多様化が叫ばれている現代。その取り組みのひとつとして「フリーアドレス」があげられます。フリーアドレスとは、「社員の固定席を設けず、それぞれ自由な席で仕事ができる制度」のこと。
フリーアドレスの導入に成功している企業もたくさんあるので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
フリーアドレスの成功事例7選
それではさっそく、フリーアドレスの成功事例を見ていきましょう。
【事例1】キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ をもって世界の食と健康に貢献する」というビジョンのもと、マヨネーズやドレッシングなどの製造をおこなっています。
フリーアドレスは、営業やコンサル部門などの部署で導入するのが一般的ですが、同社では「工場間接部門」でも実施しています。
全国各地に工場をもつキユーピー。仙川工場では、5つの部署をひとつにし、社員に対して「無線LAN」と「ノートPC」を配布。自由席での業務を促進しているといいます。
- 新たな視点からのアイデアが生まれるようになった
- ペーパーレス化が進む、業務効率が大幅にアップした
- 席を自由にしたことで、業務コストが大幅に下がった
商品の生産を手がける部門でフリーアドレスを導入したことで、業務効率のアップはもちろん、新たなアイデアが生まれるようになった事例です。
【参照】 工場の間接部門でフリーアドレス導入進む、トヨタ流業務改善の一環として自発的に現場が導入/日経クロステック(xTECH)
【事例2】日本航空株式会社(JAL)
日本航空株式会社は、「JAL」の愛称で親しまれ、航空運送事業をメインにパッケージ旅行の販売、クレジットカード事業をおこなう会社です。
2015年にフリーアドレスを導入した同社。同社におけるフリーアドレスは「調達部門」が主導。「人・モノを滞留させない」という方針に基づき、今では管理から企画まで12以上の部門で実施しているといいます。
- ワークスペースの他に、ガラス張りの会議室、集中用のソロデスク、4人用デスクなどさまざまなスペースを用意した
- 社員同士の情報共有が活発になり、それぞれの進捗や担務が「見える化」された
- 社員の生産性が上がり、残業時間が月5時間程度に
フリーアドレスによって、社内コミュニケーションが活性化され、社員の生産性が上がった事例といえるでしょう。
【参照】 文春オンライン | JAL「フリーアドレス」オフィスで、マネジメントが変わった
【事例3】株式会社内田洋行
株式会社内田洋行は、ECOソリューションやITインフラ構築、クラウド導入支援などの事業をおこなっている会社です。コーポレートビジョンは「情報の価値化と知の協創をデザインする」。
同社では、フリーアドレスを「躍動的な組織を実現するための装置」と捉え、社員がのびのびと働けるオフィス環境を整備。ネットワーク設計やコミュニケーションインフラを見直すことで、社員がいつでも・どこでも、ストレスなく働けるよう、さまざまな工夫がなされています。
- 社員の行動の自由を担保するため、全館に「無線LAN」を導入した
- 業務効率化の促進、電源と電話線をクリアにするため、タブレットPCやスマートフォンを導入し「モバイル化」を進めた
- 在籍管理やスケジュール管理、会議室予約などの業務システム管理をモバイル化させ、コミュニケーションインフラの整備を実施
社員の「業務の非効率に対するストレス」を最大限排除するために、オフィス環境の整備を徹底している事例といえるでしょう。
【参照】 内田洋行 | フリーアドレス2.0 成功のポイント
【事例4】ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」をはじめ、広告事業やeコマース事業など、幅広い事業を手がける会社です。
同社では、以前まで「スマホはどこにいても使えるのに、自分たち自身は固定的な働き方をしてしまっている」というギャップを感じる社員が多かったそう。新しいサービスを創り出しイノベーションを起こすためには、多くの人との交流による「新たなアイデア発掘」が重要だと考え、その手段としてフリーアドレスを導入することに。
- 「今日の仕事ならこの部屋、明日ならこの部屋」というように、自分の業務内容に合ったフロアへの移動ができるようになった
- 別部署のメンバーが一緒に働くシーンが増え、社内コミュニケーションが円滑になった
- 打ち合わせをしたい相手のところにすぐ移動できるため、「スケジュールを合わせる」という無駄が省けるようになった
フリーアドレスの導入によって、各社員のスケジュール管理が主体的になり、業務効率アップや社内コミュニケーションが円滑になった事例です。
【参照】 officee magazine | 「実際、フリーアドレスってどうなの?」ヤフーで働く人は知の声を聞いてみた
【事例5】パーソルキャリア株式会社
パーソルキャリア株式会社は、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンのもと、転職支援や求人情報、アウトソーシングなどの事業をおこなう会社です。
2018年から、グループごとにフリーアドレスを導入している同社。本社機能を「南青山オフィス」に移転集約し、フリーアドレスをはじめ「ワークスタイルをオフィスから変革させる取り組み」を多数実施しています。
- 社長室の前にフリーアドレス席を設けることで、社員と経営陣とのコミュニケーション活性化を促進した
- 新規ビジネスの立ち上げや運用を円滑にするため、チームを組織しやすい「可動式デスク」を設置
- 社員の要望を反映しながら進化する「コミュニケーションダイニング」、瞑想や仮眠ができる「サイレントエリア」の設置
「社員にとって居心地のよいオフィス」をつくるために、フリーアドレスをはじめとするオフィス環境の整備を徹底している事例といえるでしょう。
【参照】 パーソルキャリア | 新社屋オープン!「はたらいて、笑おう。」を目指してワークスタイル変革に挑戦
【事例6】カルビー株式会社
カルビー株式会社は、スナック菓子をメインに製造・販売する日本の菓子メーカーです。その他にも、シリアル食品やポタージュといった商品も製造・販売しています。
フリーアドレスを導入する = 社風やルールを変えなければならない、とも捉えられるため、大企業になるほど導入が難しいといわれています。しかし、カルビーは2009年「個室の中に閉じこもっていても良いものは生まれない」と考え、大企業でありながらもフリーアドレス導入を決意。
- 社員の動きがより流動的になったことで、必然的に社内コミュニケーション力が活発になった
- 「NO ミーティング、NO メモ」という標語をつくり、ペーパーレス化を促進した
- 4人席でコミュニケーションを円滑にする「コミュニケーション席」を設置
標語を作ったり、社内コミュニケーションが円滑になるような席を設けたりすることで、大企業ながらもフリーアドレスが徐々に根付いた事例といえるでしょう。
【参照】 まもりの種 | フリーアドレス制から働き方改革へ。オフィス改革を進めるカルビーの思想
【事例7】ダイヤオフィスシステム株式会社
ダイヤオフィスシステム株式会社は、「働く人が輝けるオフィスを。」という使命のもと、オフィスの設計やデザイン、働き方に関するコンサルティングをおこなう会社です。
同社では、働き方改革の一環としてフリーアドレスを導入。オフィス空間のデザイン事業をおこなう同社のフリーアドレスは、「オフィスの居心地」「見栄えの良さ」が特徴です。
- 社オフィス空間のデザイン事業をおこなう同社では、一般的なPCデスクだけでなく、下記のような多様なタイプの座席を用意。
- 集中ブース席やカウンター席、ファミレス席など、場面に合わせた座席を設けた
- さまざまなメーカーの家具を置くことで、実際に自分たちが使った感想をお客様に伝えられるようになった
デスクや椅子の種類、配置にこだわったことで「社員にとって居心地の良いオフィス」を実現。その結果、社員同士の「横のつながり」も円滑になったといいます。
フリーアドレスの失敗事例
ここまで成功事例を紹介してきました。フリーアドレスに成功している会社が多い一方で、失敗してしまう会社もあります。では、失敗してしまう会社は一体何が理由で失敗してしまうのでしょうか。その具体的な事例をいくつかご紹介していきます。
【事例1】オフィス外でも働ける環境が整備されていない
フリーアドレスでは、社外で働く社員がいることを想定し、最大人数よりも座席数が少なくなります。そのため、外出先で報告書の作成・整理ができる環境が整っていなければ、かえって業務効率が下がり、フリーアドレスの効果も低くなってしまいます。
対策は?
社員がいつでも・どこでも働けるように、業務をリモートワーク化させる必要があるでしょう。
たとえば、業務のデータをクラウド上に保管できるシステムを導入しておけば、オフィス外にいる社員も帰社する必要がないため、席数不足による生産性低下を防げます。
【事例2】書類の整理ができず業務が非効率になってしまう
フリーアドレスには「固定席」がないため、自分が担当する書類や報告書を、移動のたびに持ち歩かなくてはなりません。いつでも・どこでも働ける一方で、重要書類などを紛失してしまい、かえって非効率になるケースも考えられます。
対策は?
フリーアドレスの導入にあわせて「ペーパーレス化」を進めるのがオススメです。紙媒体のデータをすべてクラウド上に保管しておけば、PCやスマートフォンだけでいつでも業務内容を確認できます。
加えて、書類を保管しておく棚のスペースも必要なくなり、オフィス全体がスッキリするでしょう。
【事例3】社員が毎日同じ席で仕事をしてしまう
フリーアドレスを導入したのにもかかわらず、社員が毎日同じ席で仕事をしてしまうケースも多いです。そもそも、フリーアドレスを導入する目的がないと、社員もどのように働いていいかわからず、結局従来の働き方に落ち着いてしまいます。
席が固定されてしまうだけでなく、同じ部署同士で行動してしまい、社内コミュニケーションも活発になりません。
対策は?
「なぜフリーアドレスを導入するのか?」という目的を明確にすることが大切です。また、目的を定めるだけでなく、社員全員に共有し、浸透させる必要があるでしょう。
ただ、いきなり目的を全社的に浸透させようとしても、なかなかフリーアドレスは根付かないため、「あみだくじ」「くじ引き」などをおこない、強制的に席を移動してもらうのもひとつの方法です。ゲーム的な要素を取り入れて、徐々にフリーアドレスを定着させましょう。
【まとめ】フリーアドレスの成功のポイントとは?
ここまでフリーアドレスの成功・失敗事例、そして対策について見てきました。最後に「フリーアドレスの成功のポイント」をご紹介します。
具体的なポイントは以下のとおり。
- フリーアドレス導入の目的を明確にもつ
- あわせて「ペーパーレス化」を進める
- 社員にとって居心地の良いオフィス空間をつくる
まずは、フリーアドレスを導入する「目的」をもつことです。「最近流行っているからなんとなく導入してみた」というように、目的なしでいきなり導入しても社員は対応できません。
「社員の生産性を上げたい」「社内コミュニケーションを円滑にしたい」など。会社によって異なりますが、明確な目的をもった上でフリーアドレスを導入しましょう。またフリーアドレスに対応するためには、ペーパーレス化も同時に進めておくのが吉。業務効率を上げつつ、社内コミュニケーションの円滑化にも役立つはずです。
また、「社員にとって居心地の良いオフィス」であることも大切です。フリーアドレスでも、殺伐とした雰囲気だと社員も働きにくいでしょう。少しでも働きやすい空間にするため、デスクや椅子、空間のデザインにこだわってみるのもオススメです。
しっかりと目的をもち、準備した上でフリーアドレスを導入すれば、社員のエンゲージメントをはじめ、組織の生産性も大幅にアップするはずです。ぜひ今回の内容を、フリーアドレス導入の参考にしてみてください。